愛煙家の憂鬱
私が勤める職場には、煙草を愛して止まない男性がいる。
周りの人にどれだけ煙たがられても、頑なに煙草を止めない。
仕事中やお酒の席でも、どこでも構わず煙草を吸っている。
そんな知り合いに対して、職場の人はヒソヒソと彼の陰口をたたく日々が続いていた。
陰口をたたく人たちは、副流煙や発がん性の危険性を盾に、好き勝手言っていた。
ある日、僕は愛煙家の彼と県外へ出張することになった。
出張先ではレンタカーにて移動することになったのだが、彼は席に座ってから煙草に火を付けなかった。
発進してしばらくしても、煙草を吸うそぶりがなかった。
いつでも煙草を吸う彼が、レンタカーに匂いが付くことを考慮しているのだろうか。
「どうしたんだい?」
不思議そうな顔をする僕に、彼は質問をしてきた。
僕は自分が抱いていた疑問を、素直に吐露した。
すると彼は、大声を上げて笑い出した。
ますます混乱した僕に、愛煙家は言った。
「職場にいるやつらが、僕を煙たがっているのは結構。
僕だって、悪口をいうやつらを煙に巻くために吸っているんだから」