ここだけのはなし

10人見れば、10通りの解釈がある。日常にてふと思ったことを自分なりに綴ります。

線路は続かない、どこまでも ~勇者編・1~

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1・

 

「おお、勇者よ。なんと情けないことか」

 

俺はゆっくりと目を開ける。

 

外にいたはずなのに、なぜか天井が見えた。

 

寝たまま首をグイグイと左右に動かしてみると、

 

木製の椅子が規則正しく並んでいた。

 

周りは白い壁で、遠くに見える大きな扉は

 

木製で黒く塗られていた。

 

「聞いておるのか、勇者よ」

 

俺は声がする方を向いてみる。

 

そこにはシスターがいた。

 

白いローブを被り、紺色の

 

修道服を身にまとっている、

 

正真正銘に修道女だった。

 

「早く起きなさい、勇者よ」

 

俺は手を無理やりグイと持たれ、

 

修道女によって立たされる。

 

「まったく、だらしない勇者だことで」

 

「顔のわりに、きついことを言うんですね」

 

「どういう意味です?」

 

「いや、きれいで怒りそうにない顔立ちなのに。

 

なんかギャップがあるなと思って」

 

修道女は赤面するかと思えば、

 

主祭壇においてあった聖書を手に持つ。

 

「あなたという勇者は、なんと不届きな!」

 

修道女は太めの聖書を、思い切り俺に振りかざしてくる。

 

「世界のベストセラーで何をする!」

 

俺は慣れたように後ろへ飛ぶ、

 

体が勝手に宙返りをして。

 

「……あれ」

 

「なにを驚いているのですか!」

 

「なんでこんなに、身軽なんだ?」

 

「何を言っているのですか」

 

「いや、普通宙返りなんてできないから」

 

「あなたは勇者なのですよ。宙返りぐらいできるでしょう」

 

「そもそも!」

 

俺は修道女に詰め寄る。

 

「勇者、勇者って。さっきからあんたは何言ってるんだ?」

 

「お前こそ何を言っているのだ、勇者よ。

 

お前は世界を救うために立ち上がった勇者であろう」

 

「そんな訳ねえだろ。これがどんなアトラクションか

 

知らないけれど、勇者なんているわけないだろ」

 

「バカも休み休みに言え。それに……」

 

彼女の次の言葉が、

 

俺を最も恐怖のどん底に突き落とした。

 

「俺などと申しているが、

 

お前は女だぞ」

 

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