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ここだけのはなし

10人見れば、10通りの解釈がある。日常にてふと思ったことを自分なりに綴ります。

線路は続かない、どこまでも・6

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6・

 

俺は自分が降り立った駅まで戻ってきた。

 

自分が降り立ったのは街中を走る市内電車の駅で、一定の地域をぐるりと回るように走っている。

 

駅には1両編成の電車がやってきており、俺は人が降り立ってくるのを待った。

 

しかし、そこには誰もいなかった。

 

俺がそこで見たのは、電車に乗っている異形の怪物であった。

 

電車内には毛だらけで、人の胴体ほどの大きさである不定形の塊が、何十本かの触手らしいものだけで浮いていた。

 

浮いていた、というよりも立っている、と表現するほうがいいのであろうか。

 

触手の1本はスマホを持っていた。

 

画面に触手が溶け込んでいるような形で、スマホには生き物の血管のようなものが走っているように見えた。

 

電車から異形の存在は、誰も降りてこようとしない。

 

異形の存在は電車パンパンに詰め込まれており、誰もがスマホを持って、何かとコンタクトを取っているように見えた。

 

その光景はおかしいと思う自分はいるが、そこに対して自分が何か働きかけることができない。

 

数の暴力が俺の行動を縛り、まるで「この世界ではお前のほうがおかしい」というような圧力さえ感じる。

 

異形の存在は全く俺のほうを向くことはなく、集まって「ここにいるよ」という主張をしているように見えた。

 

電車は俺のことなどいないとでもいうように、誰も降りてくることなくどこかに向かって走り出した。

 

俺はそれに乗ろうとはしなかったし、乗りたいとも思わなかった。

 

まるで循環線のように、同じようなものだけが集まっている場所に、俺は混じりたいと思えなかった。

 

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