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ここだけのはなし

10人見れば、10通りの解釈がある。日常にてふと思ったことを自分なりに綴ります。

線路は続かない、どこまでも・5

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5・

 

目が覚めたとき、電車はすでに停車していた。

 

俺は重い頭をもたげながら、窓から外の景色を覗いてみた。

 

窓から見える建物は手入れが行き届いておらず、外壁が崩れていたり、屋根の塗装がはがれたりしていた。

 

俺は体を起こし、おそるおそる電車から外に出てみた。

 

まるで早朝のように暗く、白いモヤが掛かっていた。

 

遠くを見ようとしても、見えないほどにモヤが掛かっている。

 

俺は降り立った駅名を見てみるが、駅名は「存在しない街」となっていた。

 

存在しない街、どこだそれは……。

 

俺はぼそり、と言葉にしてしまった。

 

存在しない街、なのに駅名になっているという矛盾。

 

ここは本当にどこなのだろうか。

 

俺が知っている街、ではないことは確かなようである。

 

確か、と思い込まないと俺の精神は石ころ1つぶつけられただけで崩れ去りそうだった。

 

とにかく駅から離れ、周辺を散策してみることにした。

 

少し歩いただけでも、大きなビルや一軒家、デパートらしい建物が立ち並んでいるのがわかる。

 

おそらく街の中心街で、人々が多く集まる場所であったと思われる。

 

しかし、そのどれもが時間経過によって汚れや老朽化が目立ち、使われていないことがわかる。

 

この街には誰もいないのだろうか。

 

むしろ反対に、こんな場所で人になんて遭遇したとしても、俺は頼ることなんてできそうにない。

 

こんな街に居つく人間なんて、浮浪者や火事場泥棒以外にいないだろう。

 

俺は自分が電車に乗っていた経緯を思い出そうとする。

 

俺は駅のホームを移動しようとしたとき、地下の道を通っていた。

 

そのとき、フードを被った怪しい人に刺されてしまった。

 

刺された後、俺はなぜか電車に乗っていた。

 

その電車に乗って「存在しない街」にやってきていた。

 

俺は自分が生きていることさえ認識できない。

 

「われ思う、ゆえにわれあり」という言葉なんてあるが、今はそんな言葉が本当に言葉でしかなくて、何の役にも立たないと思わざるを得なかった。

 

途方に暮れているときガシャンガシャン、という音が聞こえてくる。

 

俺が降りた駅のほうから、電車が走っているであろう音が聞こえてきた。

 

俺は一縷の望みを持って、降りた駅に向かって駆け出していく。

 

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